今年も12回目の「未来技術遺産」で26件の重要科学技術史資料が登録されました。
科学技術の歴史で大きな意義のある納得の商品が選ばれています。1959年に登場した一眼レフカメラ「ニコンF」は、プロ用機として15年以上にわたり君臨した国産カメラの評価を世界に高めました。1983年に発売されたカシオの腕時計「Gショック」は、電子部品への衝撃を和らげる特殊な構造で耐衝撃性を高めアウトドアやスポーツでの使用を身近にし、洗練されたデザイン性も高く、若者に人気の商品として広く普及しました。その他にもソニーが世界で初めて開発したCDプレーヤー「D-50」も登録され、「CDウオークマン」の原型となった商品で、ジョブズがiphone開発のヒントとなった技術です。
科学技術の世界は「日進月歩」ですが、わが社も創業50周年を迎えます。ミニ社史ですが“わが社の技術遺産”もまとめて、未来へ挑戦してまいります。
子供たちの科学の心を応援!
わが社の飛騨工場がある岐阜県飛騨市は、世界最先端の宇宙物理学研究の拠点「スーパーカミオカンデ」と呼ばれる研究施設があります。この研究施設からはニュートリノの研究で小柴昌俊さんがノーベル物理学賞を受賞されています。日本海側の富山から始まる昔のブリ街道(国道41号線)に沿って岐阜までの道を「ノーベル街道」と称し、田中耕一さん(化学賞)、白川英樹さん(化学賞)、利根川進さん(医学生理学賞)の4人のノーベル賞受賞者を輩出しています。化学や物理学、医学、生理学の研究には地道で長い基礎研究の時間が必要とされておりますが研究時間の短縮のためこれからの10年で受賞者が激減すると危惧されています。飛騨市では何でも通り抜けて地球に降り注ぐニュートリノ観測装置「スーパーカミオカンデ」の研究を子供たちに遊んで学べ、身近に科学に興味を持ち最先端の研究に触れられる「ひだ宇宙科学館カミオカンデ」を開館しました。わが社も次代の科学者誕生を支援します。
生命の起源を探る「ウロボロスの蛇」
我が社の飛騨工場のある飛騨市には東大宇宙線研究所があり、16万光年も離れた星雲から降り注ぐニュートリノの研究で宇宙が何でできているかを調べています。JAXAの「はやぶさ2」は地球から約3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」から太古の水成分を発見し、生命に欠かせない水の起源の解明により小惑星が地球に衝突し、水や有機物がもたらされたという研究を進めています。
一方、地球の深海では生命の誕生は熱水噴出孔で生まれた可能性があるとして、熱水噴出孔が作るエネルギー源の発電を究明し、生体が生まれた道筋が見えてきたと発表しています。約40億年前に地球で生命はどのように誕生したのか、宇宙と地球の研究で決着がつくかもしれません。この二つの研究は古代エジプトのツタンカーメン王の墓に描かれた蛇が口で自分の尾を飲み込む「ウロボロスの蛇」の無限、永遠、不滅の象徴の理論を思い出させてくれます。生命誕生のロマンですね。
社会のインフラになるAI(人工知能)
高齢化が進み20年後には100歳以上の人口は30万人になり、人口は2058年には1億人を下回り2100年には7500万人になると推計されています。加えて労働人口の減少も大きな社会問題となり、その対応が急がれています。
人手不足は様々な職業、職場に影響を与えていますが、AIの活用が急速に進んでいます。
自動運転の電車や車の普及、工場の機械が自ら通信し必要な部品を手配したり、生産計画や需要を予測したりする「スマートファクトリー」が誕生します。ホテルやビルメンテナンスではAIを搭載したお掃除ロボが活躍しています。行政の窓口では通信アプリ・LINEを使用して市民の問い合わせの回答にAIを活用した、対話型案内サービスの実験が始まっています。
高齢社会の課題解決をする「お片付けAIロボ」が誕生したり、福祉や介護の世界にも人工知能が活躍し社会インフラの一翼を担うソーシャルシステムが実現しています。
大田区の“ものづくりお見合い”
“ものづくり集団お見合い”、受発注商談会が今年10月11日に、大田区産業プラザで開催されます。名称は「第58回、ものづくり受発注商談会in大田」で、企業の取引開拓や情報収集の商談会です。受注企業は高度なものづくり技術を持つ中小企業(180社)で、受注企業はメーカーや商社(70社)で、技術開発や研究開発のための“集団お見合い”です。面談機会のない企業と面談ができ、成約率が高く好評のフェアです。大田区、品川区の高度技術を誇る旋盤、NC旋盤加工、プレスや板金加工、研削・研磨加工・溶接や樹脂成型加工などの各種の加工、処理技術を始めAIを取り込んだ機械設計、ロボット設計・製作、医療機器や農業・水産加工機械の設計・製作と幅広い分野に対応する取り組みが特色です。日進月歩の科学技術の進化に対応したフェアです。
主催/公益財団法人大田産業振興協会ものづくりイノベーション推進課/問い合せ先:TEL03-3733-6126
平成30年間の総括
平成の30年間が終わり新しい時代へ向けて総括をすると、「JAPAN as NO.1」への“おごり”がその後の「失われた10年、20年」の低迷につながり、イノベーション的挑戦の阻害要素になったと言われています。
科学技術には大きな変化や進歩があげられますが課題も見えてきます。
この間のノーベル賞受賞者は18人で欧米に集中する中で存在感を示しますが、研究費の削減などで基礎研究力の低下が懸念されます。
生命科学や医療の分野では臓器移植や脳死移植、IPS細胞など技術革新が相次ぎました。一方で、雲仙普賢岳の大火砕流、淡路大震災、東日本大震災の自然災害に加え原発が地震と津波に襲われ、科学技術の功罪が問われています。パソコンの普及によりネット社会の到来で時代の変化は一変しました。IT化やIOT、AIなど科学技術の急速な進歩は次の時代にどのようなイノベーションをもたらすのか、倫理が問われます。
「AI」と「EI」の進歩
人工知能・AI (Artificial Intelligence)は、様々のものに組み込まれ科学技術の発展に新しい革命をもたらしていますが、一方で人工知能が人間を凌駕するのではないかという不安があることもたしかです。
急速な「AI」の普及のなかで、感情的知性と表現される「EI」(Emotional Intelligence)が話題となっています。EIを簡単に言えば“感性”です。
AIは総てを記憶させプログラムされた知能ですが、人工知能に人間と同じ感情で笑わせることはとても難しいそうです。AIのスピード、利便性は大きな利点ですがEIの根源は、一人ひとりが持つ “好奇心”や “尊重の精神”、 “共感力”などの意思をベースに創り上げる社会的存在価値です。
「AI」の進歩は「EI」の発想が源であり人間の“感性”を大切にした科学技術の進歩であるべきだと考えています。
人と一緒に働くロボットたち
Iot社会の実現が急速に広がっています。
便利さだけではない、社会環境の変化に対応したロボットたちの働きが頼もしい限りです。
■障がい者や外出困難者の社会進出を支援するロボットでは遠隔操作で接客ができる“分身ロボット”が活躍しています。
■薬剤師の代わりに薬の処方箋データを入力すると棚から薬を選んだり、複数の薬を一つの袋にまとめ正確に処方してくれます。
■未来レストランでは、料理ロボットが炒めて、揚げて、運ぶ手際よさで人手不足や衛生面でも最近のバイトテロの防止にも、こうした自動化は必要かもしれません。
■農業や林業分野では“獣害対策ロボット”が活躍しています。イノシシやシカを自動ロボが追い払ったり、捕獲状況を監視したりと広がっています。
労働人口の減少や後継者不足に悩む現場でIotやAI化は進みますが、人とコミュニケーションのできるロボットが求められています。
大阪万博とともに
約50年前、1970年(昭和45年)に史上最大の規模で開催された大阪万博は、「人類の進歩と調和」をテーマに最先端の技術を集め、海外参加76ヵ国、国内32団体の参加で開催さえました。
183日で入場者6421万人、1日平均35万人の入場者に心躍る未来技術を見せてくれました。
今では当たり前になった駅の自動改札機や動く歩道「トラベーター」やガラス張りの噴流式洗濯機の技術を使った人間洗濯機が話題でしたが、超音波で汚れを落とす洗浄器や介護用の入浴槽へと発展しています。
2025年に大阪で2度目の世界万博が決まり、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに、多様で心身ともに健康な生き方、持続可能な社会、経済システムを目指して開催されます。
昭和45年、大阪万博の年に誕生したわが社も科学技術の進歩とともに次の半世紀を迎えます。IotやAIの進化を見極めながら健康経済社会の発展に寄与してまいります。
多機能化する自販機
どこにでもある便利な自販機ですが設置場所が飽和状態で、年率1%前後の台数減が続いているそうです。
17年度の普及台数は489万2000台、18年度は484万台となっています。自販機の大多数を占めるのは清涼飲料ですが、ちょっと変わり種のアイデア自販機が広がっています。
焼きたてのピザやクレープ、だしスープ缶。
奈良県大和郡山市には生きている金魚を売る自販機も登場。他にも金貨や銀貨が買える自販機、巨大な買い物では車を売る自販機ビル。ミネソタ州では雪合戦の「雪玉」を売る自販機もあるそうですから、?という感じです。戸外に設置された自販機を外国人は金庫が外に置いてあると思ったとか。そんな自販機に防犯カメラが内蔵されたり、災害時に無料になったり傘の無料貸し出しで地域貢献をする「レンタルアンブレラ」あり、Lot社会とともにますます自販機の多機能化が進みそうです。
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