子どもの頃の遊びから生まれる科学技術の芽

世界で通用する科学者・技術者を目指す高校生の「科学技術チャレンジコンテスト」が開かれ
富山市立高岡高の林靖人さんが『ダンゴムシ』の研究で文部科学大臣賞を受賞しました。

子どもの頃よく遊んだ、すぐに丸くなるあのダンゴムシが
障害物にぶつかると左右交互に曲がるこれまでの「交替性転向反応」という定説に疑問を持ち、
観察・研究を続けた結果、障害物に接触した触角と逆向きに曲がることを発見しました。
林さんは、「分からないことを分からないままにしておきたくないから」と語り
夢は生物学者だそうです。

京都市立深川高の三宅浩一郎さんは『泥団子』の研究で朝日新聞社賞を受賞しています。
なぜ泥団子が球形を維持できるのか。泥の粒子の大きさや水分量から、最も硬い泥団子をつくる条件を調べています。
その研究応用は土砂崩れを防ぐことに役立つかもしれません。

科学技術の進歩は、小さなヒラメキや興味や粘りから生まれる”日進月歩”の力なのですね。

小惑星探査機「はやぶさ」のミッションに学ぶ

日本の小惑星探査機「はやぶさ」は、小惑星イトカワに2006年11月着陸してサンプルを採取し、総飛行距離60億kmの旅を終え、2010年6月13日地球に戻って来ました。幾多のトラブルに巻き込まれながら7年間飛び続け、オーストラリアの砂漠にカプセルを投下し、流星となって燃え尽きミッションを完遂したドラマは、技術者だけでなく国民に感動を与え、世界の人々も日本の技術を賞讃しました。

「はやぶさ」の目指した小惑星イトカワは、日本のロケット開発の先駆者、糸川英夫博士の名前を刻んだ惑星です。1955年にわずか23cmの長さと重さ200gの固体燃料を用いたペンシルロケットが、宇宙へのスタートでした。

精密機械の枠と知識を集めた技術国日本の「はやぶさ」は、流星となってその使命を次につなぎましたが、私たちの技術も”下町ロケット”のように皆さまのお役に立つ技術としてのミッションを持続したいと思っています。

 

夜空に輝くダイヤモンドの星

精密機械作りの中で「研磨」という作業はとても重要な仕事で、研磨には人工ダイヤモンドが活躍しています。工業界の中でもダイヤモンドは高価な素材ですが、このダイヤモンドが大量に存在する惑星があることが分かってきました。

2012年「アストロフィジカル・ジャーナル・レターズ」誌に、40光年離れた「かに座55番e」という惑星は主に炭素で出来ており、大量の炭素がダイヤモンドを形成している可能性があるというのです。この惑星の大きさはわかりませんが、惑星の地層の3分の1がダイヤモンドだろうと推定されているそうですから驚きです。また、天王星と海王星にもダイヤモンドの層が存在するだろうとの論文も発表されており、宇宙は”宝の星”ですね。

夕日、朝日を見る子どもたちが少なくなったと言われていますが、親子で夜空を見上げながら遙かな宇宙にロマンを感じる時も欲しいものですね。

日進月歩の「大田の工匠たち」

大田区の町工場で施盤工として現場で50年働き、一方で作家としても活躍される小関智弘さんが

先進技術立国、日本の飛躍を支える大田区の伝統を受け継ぎ
いまの技に挑む小さな工場の夢ある工匠たちの物語『どっこい大田の工匠たち』を出版されました。

大田区には、従業員3名以下という小さなものづくりの場に光をあてて、そこで働く卓越した技能者を”現代の名工”とし「大田の工匠100人」の名で、5年間で103名の工匠を表彰する制度があります。その内から15人の工匠のハイテクと最先端技術と呼ぶものではないのですが、ものづくりの最前線で生きる人たちの技に光をあて、本書で紹介しています。

当社とご縁のある、蒲田で江戸切子の伝統を守り抜かれている東亜硝子工芸の鍋谷馨さん、聰さん親子も生き生きと描かれており、とても誇りに感じています。

「大田の工匠100人」は、まさに”日進月歩”の匠集団で、世界の先進技能を支えているのだと強く感じています。一読をおすすめします。

【参考文献】
小関智弘『どっこい大田の工匠たち』 現代書館

“蒲田チーム”の団体戦

2001年、有機合成の研究でノーベル化学賞を受賞された野依良治先生は
《頭脳・大循環時代》と称したインタビューの中で

『科学はガラパゴス化を脱して、多文化を融合させ、知の団体戦に挑め』

と、語っておられました。ガラパゴス化とは、世界の潮流から取り残され独自の進化を歩むことですが、今や科学技術の発展には個人戦ではなく団体戦が必要で、多様な価値観や文化を融合させて新しい革新(イノベーション)が必要だと説かれています。

私たちの 蒲田地域は、技術と知恵が集積した団体戦の世界です。お互いの利点や違いを知りながら共通の価値観をつないできた先進的な地域で、規模を誇るのではなく、国家の利益を乗り越え、友人、仲間として多層的な人間関係を築きながら荒波に耐えてきた強さがあると思います。

我が社も誇りある蒲田の団体戦の一員として

“一人の一歩より百人の一歩”

を大切にしてまいります。

「産業革命」と”働く”

1747年にフランクリンが電気を発明し、
1764年に紡績機が、
1767年にはワットの蒸気機関が改良され、
1770年頃からイギリスが産業革命期に入り、世界は急速に発展していきます。

この産業革命以降時計の普及によって、時間という概念に変化が生じ
人が提供した時間の価値によってお金を得る「雇用」(JOB)という関係が生まれ、今日に続いています。

もともと私たちは、自分のために 畑を耕し 作物をつくり 糧を得るために「働く」(WORK)ことによって価値を生み出し、お金を得てもきたのです。

「雇用確保」なのか「働く場の創造」なのか迷いますが、
私たちは”ともに働く仲間”であり決して”働き手”ではないと思っています。蒲田というまちも、ともにみんなで”働くまち”だと感じています。

しかし、急速なデジタル社会に入り、時間が無時間性になり、「働く」にも新しい常識(ニューノーマル)が必要になって来ているのかも知れません。

ウロボロスの蛇

先代社長渡辺のふる里であり、支社もある岐阜県飛騨市は、ノーベル賞を受賞された小柴博士の東大宇宙線研究所があり、宇宙素粒子ニュートリノの研究で世界的に有名な「スーパーカミオカンデ」があります。

1秒間に何十兆個も降り注ぐニュートリノの研究では、宇宙が何でできているかを調べています。カミオカンデにたどり着いた素粒子は、16万光年も離れた大マゼラン星雲から来たそうですから驚きです。

こ の宇宙線の研究はギリシア神話の「ウロボロスの蛇」に例えられ、蛇は自分の尾を飲みこんでいる図が「世界の完全性」を表現する古代ギリシァ人の哲学で、宇 宙も起源を知ろうとするためには素粒子を知る必要があるという構図と同じだからです。つまり、遠い宇宙は1027(10の27乗)メートル、一方の電子顕 微鏡で見る素粒子の世界は10-35(10の-35乗)メートル、それが私たちの自然界の幅であり62桁もの距離がある世界なのです。私たちの仕事の背景 には、気の遠くなるよう科学の世界と、限りないロマンを感じます。