私たちの会社は精密機器のオーダーにも応える産業ロボット分野でも活動していますが、ロボットの社会的普及と変革・恩恵には素晴らしい発展があります。自動洗浄機に始まり、お掃除ロボ、介護ロボや災害ロボコンと進化し、いよいよ自動車も名前通り自動運動へと急速に進化しそうですが、人との共存に向けて法律の在り方が議論され「ロボット法学会」が設立されます。その理由は、自動運転の車が事故を起こしたら責任を取るのはメーカー?、乗っている人?。介護ロボが人にケガや骨折をさせたら誰の責任?。もしも、人工知能ロボが故障で危害を及ぼしたら――――と数々の法的問題が生じます。新たな法解釈や立法が必要で開発する私たちもあらかじめルールを作り、そのリスクが予測できれば開発にも力が入り責任も明確になります。
無人飛行体ドローンが急速に広がるなか、新しい秩序が必要なのと同じですね。
どないかします
鷲田清一さんが執筆される「折々のことば」(朝日新聞)に、東大阪の工場主の言葉として「どないかします」が紹介されました。
「町工場のまち、東大阪でよく聞かれることば。部品のみならず、遊びのコマから人工衛星までつくってきた。どう考えても無理、採算も合わん、けどこの人の必死の思いをかなえてやりたい…と、この一言でどんな難しい注文も請け負う。(略)」-とても愛情にあふれた文章が綴られています。
町工場の蒲田も同じ思いで、求められる技術や仕事に対する姿勢は西も東もないと感じました。関西では「どないかします」、関東では「なんとかします」となりますが、なぜか言葉の持つ響きの違いに驚きます。鷲田さんは「人の求めに応える喜びと、無理に挑む楽しさとがあってはじめて口にできるせりふだろう」と書かれています。「どないか」と「なんとか」、二つの言葉の響きと温もりの違いを感じるのは私だけでしょうか。
108歳の回転木馬(メリーゴーランド)に感動
日本の産業革命遺産の勧告が世界のニュースになっていますが、日本機械学会が2007年から認定を始めた「機械遺産」をご存知ですか。毎年8月7日の「機械の日」に発表されますが、もう70件以上の機械遺産が認定されています。そのなかに「としまえん」(練馬区)の回転木馬「カルーセル エルドラド」、1907年にドイツ人技師ヒューゴ・ハッセ製作の回転木馬が現役で動いています。木造で24頭の馬と6頭の豚が走るアールヌーボー調の木馬です。米国の遊園地が閉鎖され、としまえんが輸入し2年かけて改修し71年に息を吹き返したハッセの最高傑作として高い評価を得て、2010年芸術作品と機械技術が融合した見事な作品として機械遺産に認定されました。
メリーゴーランドは遊園地の花形として、いまも子どもたちに夢とロマンを与えていますが技術屋としては108年もまわり続けてる回転木馬に嬉しさと誇りを感じます。
夢、開く日本の産業革命遺産の勧告
明治日本の産業革命遺産として国内23資産がイコモス(国際記念物遺跡会議)から世界文化遺産「登録」を勧告されました。
正式決定は7月頃、21ヵ国の委員国がドイツのボンで開かれる会議で決定されるそうです が、その基準は“遺産の価値の証明ができるか、遺産を守る体制が整っているか”などが判断されて、正式決定となります。
幕末から明治の近代化産業史に残る150年から200年も前の産業遺産で、長い鎖国政策から西洋の技術を学び明治維新後に日本に急速な勢いで近代化を築いた志を今に継ぎ、モノ作りニッポンの原点が評価されるのです。
世界から評価される蒲田のまち工場群も、これから100年、200年後には世界の技術を支える日本の匠集団のまちとして評価される のではないでしょうか。
わが社も小さな精密機械の匠工場ですが、日本の技術の「底力」とその志を後世につなぎ続けていく所存です。
未来のエジソン育成に期待!
日本の学校教育は、オールマイティーで協調性のある人間を育てるには適しているという指摘がありますが、いま教育の形を見直そうという動きがあります。
なかでも、東大先端科学技術研究センターが中心になって進める「異才発掘プロジェクト」は、小中学生を対象に才能があるのに学校教育になじめなくコミュニケーションが苦手だったり、興味が先走ったりするエジソンのような子どもの突出した才能を世界のトップランナーに育てようという教育の場づくりが始まっています。日本の大学教育は東大を頂点にしたシングルピーク構造ですが、これをアカデミックスクールと職業教育を重点にしたプロフェッショナルスクールの2つのツインピークス構造にし、ローカル経済圏で活躍できるレベルの高い専門知識・技術をもった人材育成をしようという動きもあります。私たちの企業のように技術で支える現場にとっては、未来の若きエジソンたちに期待です。
「都市鉱山」と「人口鉱床」
ミステリアスな名称ですが「都市鉱山」の名付け親は東北大学の南条道夫教授で、「工業製品を再生可能な資源とみなし、蓄積された場所を都市鉱山と名付けた」と88年に論文で発表したのが最初だそうです。
携帯電話やパソコンに使われる希少金属(レアメタル)が再利用の対象で、インジウムやパラジウム、コバルトや金、銀、錫、アンチモンなどの金属が回収されています。日本国内にあるインジウムの量は、世界の天然鉱山にある埋蔵量の6割あり、世界の消費量と比べると3.8年分に当ると推測されています。また携帯電話1台に使われる金の量は6.8mgで、鉱石より含有率が高く、その埋蔵量は6,800tで、時価22兆円相当に上るそうですからお宝鉱床です。こうした有用金属を含む製品の廃棄物や製造中にでる廃物の再利用回収システムを作る「人口鉱床」計画も進められており、私たちも希少金属資源のリサイクルには細心の注意を払っています。
「手」の国、日本
私たちの工場は、お客様と話し合いながらどこにもない誰も作った事のない精密機器や実験機器を手づくりで研究開発をしています。蒲田にある多くの工場は熟練の職人達の手仕事に、世界が高い評価をしています。まさに、日本は”手の国”だと思っています。
土と炎の詩人で陶芸家の河井憲次郎は、陶芸を「手考足思」、「手念足願」、「手護足解」と表現しています。「上手」、「下手」は手の技を語り、「手本」、「手柄を立てる」は手を褒め、「手腕」は力量、「腕利・腕前」も手から生まれた言葉です。手が機械と異なるのは、いつも心とつながっていてものを創らせ、高め働きに悦びを与えていることです。手が働かなくなると「手詰り、手遅れ」となり、結果は「手ぬかり、手落」と厳しい表現になります。この手の仕事の力が衰えたら日本人は特色の乏しい国になるのではないでしょうか。いつも、我が手を見ながら改めて「手」に感謝しています。
ロボットと暮らす日
日本の総人口は2040年度頃には1億人を割り、9,600万人程になり生産労働人口は8,000万人から30%減の5,600万人になると予測されています。この人口減をどのようにカバーすれば良いのでしょうか。
さて、現在様々な分野でロボットが活躍しています。家庭ではお掃除ロボットや、人工知能を使って会話をしたり接客をする人型ロボットが働いています。すでに工場では多くの工業用ロボットが活躍していますが、医療分野や介護施設でもロボットが進出しています。15年後の2030年には現在の仕事の30%~40%がロボットに代わっていると予測されていますので、生産労働人口減をロボットがカバーすることになるでしょう。もちろんロボットは万能ではありませんが、鉄腕アトムやドラえもん、ケアロボット、ベイマックスのようなマンガやアニメの世界が実現するかも知れません。我が社も工業用ロボットの一翼を担っていますが、ロボットと暮らす日を想像しています。
地域の魅力を発信する”町工場・オープンファクトリー”
ノーベル賞の受賞者を祝う晩餐会で使われたナイフやスプーン、フォームなどの美しいテーブルウェアが新潟・三条の町工場で作られたことで話題になりましたが、いま地域にある町工場の魅力が地域活性化に一役かっています。大田区でも「おおたオープンファクトリー」として、世界に通用する職人技を見学したり、体験したりできる工場が公開されています。工場の得意な技術は持ち回りでこなして製品を完成させる「仲間回し」の連携プレーの見学やミニフライパン作りを熟練の職人に教わりながらステンレス板の加工をしたり、取っ手やプラスチックカバーの製作などの体験を楽しめるのです。町工場の職人技を間近に見られるオープンファクトリーに、海外からの弟子入りもあり人気の場となっています。台東区の「モノマチ」や「A-ROUND(エーラウンド)」、墨田区の「スミファ」などのオープン町工場もあり、地域と共生しながら新しい町の魅力を発信しています。
日進月歩の夢を乗せて「はやぶさ2」 の旅立ち
小惑星イトカワから微粒子を地球に持ち帰った小惑星探査機「はやぶさ」の感動と夢を受け継ぎ、「はやぶさ2」が地球と火星の近くを回る小惑星「1999JU3」 に向って、12月3日種子島宇宙センターから旅立ちました。
「はやぶさ2」 は、ほぼ1号と同じ大きさですが重さは少し重い600kgで、姿勢制御装置やイオンエンジンの耐久性や推力を増強するなどの技術的な改良を重ねて飛び立ちます。大手企業から数人の町工場まで100社以上の職人達の夢と技術を乗せ、小惑星に到達するのは2018年 夏の予定で小惑星の表面物質や地下物質を採取して地球に戻るのは、2020年東京オリンピックの年の年末になるそうです。こうした探査機の実験はやがて火星に人を送り100年後かもしれませんが、火星移住を目指すことが目標だそうですから宇宙へのロマンは広がります。我が社も日々 の技術革新が常に夢への挑戦ですが、「はやぶさ2」の成功を願わずにはいられません。
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