時代を変える「IoT」

IoT(Internet of Things)  全ての“モノ”がインターネットにつながる時代が急速に始まっています。
これまでの家電見本市が中韓勢に主役を奪われ、今年はIoT総合展シーテックとして衣替えしました。家電業界はハードウエアだけでは成長が難しく、機能の体験やサービスを含めた価値を提供する“モノとコト”の融合として、環境や農業、交通や観光、気象や位置情報、教育などのあらゆる分野で、“モノ”に通信機能を持たせる新しいシステムとして、機器をインターネットにつなげる技術革新がドイツやアメリカが先行して進んでいます。
日本でも2400社の企業が参加してIoT推進コンソーシアムを日米独の3か国主導で始まっています。
IoT化はいろいろな“モノ”づくりに新しい変革をもたらします。私たちの会社も新しい時代に対応した技術革新に取り組んでいます。ご期待ください。

今年の機械遺産と技術遺産

歴史的に技術面で意義のある機械と科学技術の歴史や生活に大きな影響を与えた製品が、機械遺産と技術遺産として選ばれました。
今年10回目の機械遺産は、日本機械学会が「機械の日」に認定したのが富士重工業が1958年に販売した軽自動車スバル360、愛称「てんとう虫」など7件で、他に66年に商用地熱発電所として初めて運転を始めた岩手県の松川地熱発電所が選ばれています。
国立科学博物館が新たに登録したのは、ライオンが1999年に製造を始めた生活排水による環境汚染や洗浄効果と安全性を向上させた酵素パワーの合成洗剤「トップ」など16件が登録されました。
当社でも機械油に汚れた手を肌に優しく汚れを落とすとして開発された石鹸「クオリオ」がありますが、機械や技術の発展はいつも“必要の母”から生れるのですね。

命の時間

104歳の医師、日野原重明先生は「命は誰でも持っている。命とは時間を使うこと。子どもの時は、自分のためだけに使うことが出来る。大人になると、その時間を“人のために”使う。それが命(時間)の使い方」と語っています。
かつて企業30年説が唱えられ、企業変革が求められたように企業はいま“人のためにどのようにお役に立てるか”-ソーシャルシフトという新しい命題が求められています。
日野原先生の言葉のように“企業の命”も人のために、どのように時間を使うかを大切にする時代だと思っています。単に求められたモノや売れるモノを作るだけではなく、いかに喜ばれ感謝されお役に立てるコトに貢献できるかが本当の商品価値だと考えています。
私たちの会社は、精密機械の開発、製作を通して社会にお役に立つ“モノとコト”づくりに大切な“命の時間”を使ってまいります。

「かかりつけ医」とロボットの交流

英国の「かかりつけ総合診療医」は、患者の心身の不調だけでなく様々な悩みに対応します。例えば身寄りのない高齢の患者が唯一の楽しみである“テレビが壊れた”と訴えて来たときテレビの故障は本人にとって一大事ですから医師はすぐに往診し、診療と合せテレビの修理業者を手配し患者の悩みを解消します。

1999年世界初の癒しのイヌ型ロボット「アイボ」を発売したソニーは、2006年に家庭用ロボットから撤退しましたが新たにハードとサービスを組み合わせたロボットに進出します。

高齢者の話し相手や癒し、赤ちゃんをあやすロボットが活躍していますが、仲間と楽しくおしゃべりするだけで薬を飲まなくても痛みが消える例もあり、英国ではこうした効果を「社会的処方」と称して活用しています。

治療をしながら高齢者の健康自立を支えるソーシャル技術に挑戦してまいります。

 

広がるロボット君!

自動で動き回って床をきれいにするお掃除ロボ「ルンバ」が人気で、国内メーカーも「トルネオ ロボ」や、おしゃべりもできる「ココロボ」が売り出され玩具メーカーや家具、流通大手もPB商品で追いかけます。また、世界初という全自動洗濯物折りたたみロボ「ランドロイド」が登場し話題になっています。
今年の国際食品工業展では「食品ロボ」が人気になっています。ジャガイモの皮むき機はありますが芽を取る「芽取りロボ」やブロッコリーをカットするロボ、キャベツをサイズごとに分けるロボ、ご飯をほぐしながら好みの量を器に盛って、牛丼のタレをしみこみやすく盛る「シャリ弁ロボ」、アンズやプルーンの種取りをするロボなど個性的に進化しています。食品工場が注目するロボット達ですがファミレスや寿しやで人手不足を支援するための「働くロボット」が進化し始めています。人と機械の融合、私たちの精密機器の仕事は、家事代行へと広がっています。

飛騨市の地底から生れるノーベル賞

我が社の工場がある岐阜県飛騨市は、宇宙の謎を解明する施設が地底に集中し、世界が注目しています。ノーベル物理学賞を受賞した小柴昌俊さん、梶田隆章さんを輩出したスーパーカミオカンデが更に進化しています。

今年2月、アインシュタインの最後の宿題と言われる「重力波」を米国チームが初観測に成功したと発表し、早くもノーベル賞候補といわれていますが、本施設でも世界初の大型低温重力波望遠鏡「KAGRA(かぐら)」が完成し、7億光年のかなたから来る重力波による光のゆがみを観測する試運転が始まり、2017年度の観測開始に向けて取り組みがスタートしました。その他に、宇宙空間の4分の1を占める正体不明の「暗黒物質」の観測や、物質の原子核をつくる陽子が壊れる「陽子崩壊」現象の観測、ニュートリノを人工的に作って飛ばしたりと次のノーベル賞を目指した研究が進められています。宇宙の謎解きから新しい技術が生まれることは間違いありません。

第4次産業革命

米シリコンバレーで多くのITベンチャーが誕生し、科学技術の進歩は日進月歩で現代は「第4次産業革命」といわれています。
国も新成長戦略のテーマに第4次産業革命への対応を上げ施策の具体化を進めています。
ものづくり大国でありながら働き手が減少する日本と同じドイツでもその課題に対応して

・機械や製品を通信でつなぐ
・機械が自ら考えてものをつくる
・単純労働から働き手を開放する

を目標に第4次産業革命に着手しています。
国も世界最高水準の国立大学づくりを掲げ、大学発ベンチャーの創出を後押しする方針を決め、ITに強い人材育成を始めます。
職人の技を機械に伝承し「勘」の力をデジタルがつなぐ時代が始まっています。
高齢化、人口減少の社会で職人が失くなるのではなく職人と機械が新しく共存する産業革新であってほしいと願っています。

2030年の深海都市

宇宙に向うエレベーターもあれば、深海に向う海底 都市も現実に向って考えられています。
清水建設が2030年に完成を目指す深海都市構想で、その名も「オーシャンスパイラル」。
水深3千~4千 mの海底から海面にそそり立つ未来都市で、約5千人が暮らすまちです。
海面近くの深さ500mの所に建てられる球状の都市から下向きにらせん状の通路が延び、海底にあるメタン製造工場につながります。
海水の温度差で発電したり、海底の微生物で二酸化 炭素を燃料用のメタンガスに換えたり、途中には深海探査艇の補給基地を備えたりと新技術がいっぱいです。球の中心に立つ塔が住居やホ テルになりますが、深海都市は地震などの災害の影響を受けにくいメリットもあるそうです。コンクリートの代わりに樹脂を使い巨大な3Dプリンターで建設する計画で、総工費は3兆円、工期は5年と計画されています。町工場の技術も是非貢献したいものですが、未来技術の夢は無限ですね。

陽気なジャマイカが「下町ボブスレー」採用!

1988年カル ガリー冬季五輪でカリブ海の島国ジャマイカが冬のオリンピックの花形競技、ボブスレーに挑戦した映画「クール・ランニング」をご存知で しょうか。
雪のない南国のボブスレーへの挑戦と聞いただけでわく わくしますが、そのジャマイカ・チームが2018年韓国・平昌(ピョンチャン)の冬季五輪に日本の国産 そり「下町ボブスレー」を採用し、参戦することになりました。
この「下町ボブスレー」は、蒲田の町工場の技術力を世 界に示そうと2011年に中小工場の技術力を集結してプロジェクトをスター トさせ制作しましたが、2014年のソチ五輪では不採用になり、改良を重ねて挑戦して きましたが残念ながら平昌五輪でも採用されませんでした。でも、世界的な注目を集めている陽気なジャマイカ・チームが蒲田の「下町ボブス レー」を採用したことで「下町ロケット」同様に蒲田の技術が注目されそうです。嬉しい知らせですが、これがグローバルですね。

「下町ロケット」のまち蒲田

「下町ロケット2・ガウディ計画」のTV放映が高視聴率で終りました。このドラマの佃製作所のモデルとなった会社が、我が社の近くにあります。今、蒲田には4000社程のまち工場がありますが世界に誇る超微細加工や精密部品、研磨技術など多様な技術が集積され、日本の匠の熟練の技と先進技術を供給するもう一つの“シリコンバレー”といわれています。
下町ロケットの佃製作所のように”佃品質・佃プライ ド”は、不可能を可能にするモノづくり精神として蒲田のまち工場全体のスピリットなのです。日本発の商業衛星H2Aロケット29号の打ち上げ成功は、その成功確率と合せ世界が注目する商業ロケットです。
ロケットの部品は点数が多く、2次請けまで含めると1000社以上が関わるとされ、部品作りで実績を残す中小メーカーにとってまち工場の部品を積んだ下町ロケットは希望の星です。NASAの技術を担う蒲田の技術に期待ください。「できない」ことを「できる」で精進してまいります。