考古学で活躍するロボット

琵琶湖の底、水深60mに眠る「葛籠尾崎(つづらおさき)湖底遺跡」の調査がロボットを使って立命館大学びわこ、くさつキャンパスで進められています。ダイバーが水流が強い深い湖底で調査するのは危険で、低価格で水深100mまで観察でき、考古学者が一人で操縦できる小型軽量ロボットの開発が進んでいます。

なぜこんな深い場所に約1万年前から11世紀までの土器があるのか、なぞの多い遺跡です。

誰がこんな深い所に土器を捨てたのか、それとも儀式だったのか、船が転覆したのか、地震で集落が沈んだのかと謎はつきません。

今や考古学には科学技術は欠かせませんが、この湖底遺跡の調査では考古学を中心にロボット工学や文学部、自然科学、芸術学科も加わって、人間はどう生きてきたのか、土器についた小さな種の成分や植物学と幅広い課題から共同研究が進められています。人間の歴史の解明に文系と理系が連携する時代、当社もこんな技術開発に挑戦していきます。

「“一人家電メーカー”中沢優子さんの挑戦」

たった一人で個性的な家電製品を少量生産するベンチャー起業「UPQ」(アップキュー)を知っていますか。女性ユーザーの支持を集めて、コンパクトにたためる原付免許で乗れる電動バイクやアイロン、電気釜とヒット商品で評判です。大学は経済学部で機械オンチですがそれを逆手にとって「機械オンチがメーカーに入れば、ユーザーの気持ちが代弁できる」と、07年カシオ計算機に入社。携帯が好きで念願の携帯製品の企画を担当し「美撮り」機能付き製品がヒットする。が、メーカーの市場撤退を機に12年、会社を退職し15年7月UPQを起業します。その1か月前に、香港の家電見本市で目をつけた中国のスマホ工場に単身乗り込み試作を交渉し、スマホのタッチパネルを応用した透明なキーボードを開発し注目されます。常にお客さま目線の発想とたくさん売ることを考えず、新しい常識に挑戦する34歳の主婦社長・中沢優子さんに日本の製造業の新しい未来を感じます。

新しい観光名所「工場見学」

ままごとの進化形「キッザニア」のあこがれの職業体験が人気ですが、身近な町工場の見学や体験教室も人気です。大田区でも「おおたオープンファクトリー」で工場見学や体験教室が公開されています。伝統の職人技や宇宙科学を支える技術を間近で見たり経験することで次世代の担い手が育ってくれることを願っています。最近では家族で体感するケースが増え埼玉県八潮市の文具製造「イワコー」さんの“おもしろ消しゴム”工場見学が年間400回、1万人以上の見学者が訪れる地域の観光名所になっています。高温で溶かされて軟らかくなった消しゴムの材料を触らせてもらった子どもたちから歓声が上がるそうです。

創業者の岩沢さんは「子供は国の宝。断るなんて」という言葉に感動します。当社も創業者渡辺の故郷から高校生たちが職業学習を兼ねて工場見学に訪ねてくれますが、蒲田の技術を次の世代につないでくれれば嬉しい限りです。

『愛されるロボット犬「AIBO」に学ぶ』

ソニー生まれのロボット犬「AIBO」が誕生したのは1999年、この世界初のエンターテイ

メントロボットは発売20分で3千体を完売し、累計約15万体が売れたが事業としては成功せず、2006年に生産を終了、14年には修理サポートも終了し、15年に国立科学博物館が未来技術遺産として登録しています。

作家の山内マリコさんの短編「AIBO大好きだよ」では“機械と人が心を通じ合うことに少しも違和感がなく、人間と同じくらい上等なハートがある”と書いています。

愛されるAIBOは、17年たった今もオーディオ機器などを修理する技術者の舟橋浩さんのもとに修理の依頼が急増しており、お客様は修理ではなく“治療”といい、“入院”待ちも400体で故障したAIBOを捨てられず、解体した部品を“献体”として申し出があるそうです。

機械を作る私たちも、一つひとつの製品に限りなく“愛”を感じていますが、何を心や命と呼ぶかは私たちが決めるのですね。

ドラえもんの秘密道具、実用化!

27年前に上映された30年後の世界にタイムスリップしたSF映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で登場した夢の未来技術のほとんどが実現したお話を前にお伝えしましたが、いま、漫画「ドラえもん」の秘密道具が実用化に向けて開発されています。

秘密道具のほしいものランキングの1位は「どこでもドア」で、2位は「タイムマシン」、3位の「タケコプター」は「ドローン」でしょうか。そして4位の「ほんやくコンニャク」が開発されています。鎌田の世界の玄関口、羽田国際線のターミナル駅や東京メトロの改札口などで、しゃべった言葉がその場でほかの言語に翻訳される、ドラえもんの「ほんやくコンニャク」が“音声自動翻訳システム”として2020年の東京五輪に向けて、官民で本格的な取り組みが進んでいます。

“食べるだけで外国語が話せる”とはいきませんが、科学の日進月歩に私たちも励まされます。

「スマート工場」を売る!

浄水器や排水処理装置の荏原製作所が機械や装置を売るのではなく、排水を綺麗にして流すシステムを提供する“モノからコトを請け負うサービス化”に転換しています。お客の悩みや不安を解決するために、工場内の設備や制御システムをIoTで結び集めたデータを使って生産効率を高める、モノづくりの生産ラインと管理システムを一括して売る「スマート工場」の販売が始まりました。

少量多品種の製品の生産を自動で調整できるよう、1つのラインにメーカーや工程が異なる機械が組み込まれていても、1台のパソコンで一括して管理できる方式で、切り替えにかかる時間が3分の1に短縮し、生産性を3割程度上げられるというシステムです。

工場の大小ではなくAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)化で新しい 「スマート工場」とし、サービスの経済化が急速に進んでいます。我が社もお客さまの悩み解決に取り組んでまいります。

時代を変える「IoT」

IoT(Internet of Things)  全ての“モノ”がインターネットにつながる時代が急速に始まっています。
これまでの家電見本市が中韓勢に主役を奪われ、今年はIoT総合展シーテックとして衣替えしました。家電業界はハードウエアだけでは成長が難しく、機能の体験やサービスを含めた価値を提供する“モノとコト”の融合として、環境や農業、交通や観光、気象や位置情報、教育などのあらゆる分野で、“モノ”に通信機能を持たせる新しいシステムとして、機器をインターネットにつなげる技術革新がドイツやアメリカが先行して進んでいます。
日本でも2400社の企業が参加してIoT推進コンソーシアムを日米独の3か国主導で始まっています。
IoT化はいろいろな“モノ”づくりに新しい変革をもたらします。私たちの会社も新しい時代に対応した技術革新に取り組んでいます。ご期待ください。

今年の機械遺産と技術遺産

歴史的に技術面で意義のある機械と科学技術の歴史や生活に大きな影響を与えた製品が、機械遺産と技術遺産として選ばれました。
今年10回目の機械遺産は、日本機械学会が「機械の日」に認定したのが富士重工業が1958年に販売した軽自動車スバル360、愛称「てんとう虫」など7件で、他に66年に商用地熱発電所として初めて運転を始めた岩手県の松川地熱発電所が選ばれています。
国立科学博物館が新たに登録したのは、ライオンが1999年に製造を始めた生活排水による環境汚染や洗浄効果と安全性を向上させた酵素パワーの合成洗剤「トップ」など16件が登録されました。
当社でも機械油に汚れた手を肌に優しく汚れを落とすとして開発された石鹸「クオリオ」がありますが、機械や技術の発展はいつも“必要の母”から生れるのですね。

命の時間

104歳の医師、日野原重明先生は「命は誰でも持っている。命とは時間を使うこと。子どもの時は、自分のためだけに使うことが出来る。大人になると、その時間を“人のために”使う。それが命(時間)の使い方」と語っています。
かつて企業30年説が唱えられ、企業変革が求められたように企業はいま“人のためにどのようにお役に立てるか”-ソーシャルシフトという新しい命題が求められています。
日野原先生の言葉のように“企業の命”も人のために、どのように時間を使うかを大切にする時代だと思っています。単に求められたモノや売れるモノを作るだけではなく、いかに喜ばれ感謝されお役に立てるコトに貢献できるかが本当の商品価値だと考えています。
私たちの会社は、精密機械の開発、製作を通して社会にお役に立つ“モノとコト”づくりに大切な“命の時間”を使ってまいります。

「かかりつけ医」とロボットの交流

英国の「かかりつけ総合診療医」は、患者の心身の不調だけでなく様々な悩みに対応します。例えば身寄りのない高齢の患者が唯一の楽しみである“テレビが壊れた”と訴えて来たときテレビの故障は本人にとって一大事ですから医師はすぐに往診し、診療と合せテレビの修理業者を手配し患者の悩みを解消します。

1999年世界初の癒しのイヌ型ロボット「アイボ」を発売したソニーは、2006年に家庭用ロボットから撤退しましたが新たにハードとサービスを組み合わせたロボットに進出します。

高齢者の話し相手や癒し、赤ちゃんをあやすロボットが活躍していますが、仲間と楽しくおしゃべりするだけで薬を飲まなくても痛みが消える例もあり、英国ではこうした効果を「社会的処方」と称して活用しています。

治療をしながら高齢者の健康自立を支えるソーシャル技術に挑戦してまいります。