夢を形にする未来の科学技術

空を自由に飛べる「タケコプター」や、どこへでも行ける「どこでもドア」など、
誰もが一度は「ドラえもんのひみつ道具」を使ってみたいと夢見たことがあるのではないでしょうか。現代の科学技術は、かつては空想の産物と思われていたドラえもんのひみつ道具を、現実のものに近づけつつあります。

たとえば、食べるだけでどんな言葉でも通じるようになる「ほんやくコンニャク」は、
ポケットサイズの翻訳機やスマートフォンアプリ、さらにテレビ電話を活用した通訳サービスなど、言葉の壁を取り除く技術によって、すでに実現できていると言えるでしょう。

また、写真の料理をひと口だけ味見できる「味見スプーン」は、NTTドコモが現在開発中の
「FEEL TECH(フィールテック)」によって、その実現に近づいています。
フィールテックは、味覚、嗅覚、触覚といった五感を共有できる技術で、この技術が確立すれば、映画やドラマに登場する料理の味を、家や映画館で体験できる日が来るかもしれません。
新しいエンターテインメントの楽しみ方や、より豊かなコミュニケーションの形が生まれる可能性に胸が高鳴ります。

多くの科学的な発明や技術は、かつて誰かが空想した未来像や夢から始まっています。
ドラえもんのひみつ道具は、未来の科学技術が私たちにもたらす無限の可能性、そして私たちが、その技術とどう向き合っていくべきかを考えるきっかけを与えてくれる存在です。

パラスポーツの進化を支えるテクノロジー

2024年夏のパリ・オリンピックでは、日本代表選手が素晴らしい活躍を見せてくれました。現在、パラリンピックが開催中です。さまざまな障がいを持つパラアスリートたちが、創意工夫を凝らしながら限界に挑む姿は、多くの人々に感動と勇気を与えるとともに、共生社会の実現に向けた意識改革を促しています。

近年、スポーツ義肢や装具、用具は、競技や選手の特性に合わせたテクノロジーの導入により、目覚ましい進化を遂げています。この技術革新により、これらの用具は単なる補助具の役割を超え、パフォーマンスの可能性を広げるための強力なツールとして機能しています。

たとえば、3Dスキャナーやモーションキャプチャーなどの機器を使って、選手が感じる微細な感覚を「見える化」することが可能になりました。これにより、選手の体と一体化した精度の高い用具を、従来よりも迅速に開発できるようになっています。
さらに、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)といったデジタル技術も、パラスポーツの訓練やリハビリにおいて重要な役割を果たしています。これらの技術は、実際の競技場を再現したり、特定の動作を繰り返し練習したりする際に非常に有用です。

今後も、パラアスリートの記録向上にテクノロジーの進歩が大きく貢献していくことは間違いないでしょう。パラアスリートが魅せるパフォーマンスの進化に日本のものづくりの力が大いに寄与することが期待されます。

広がるロボットの技術進歩と可能性

ロボットの開発・導入を促進する専門技術展「関西ロボットワールド2024」が5月30日・31日にインテックス大阪で開催されました。

今回の展示会では、ロボットメーカーだけでなく、AIやシステム関係の出展が多く見られました。特に、ロボットに動作を教え込むティーチングや専門技能の省力化に焦点を当てた展示が多く、専門知識がなくてもロボットを活用できる環境作りが進められていることを感じます。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)の展示では、災害現場や宇宙空間などのデータが収集しづらい環境下で、コンピュータグラフィックス合成画像を用いたAIによる障害物検知など、宇宙空間におけるロボット技術の応用が示されてました。

関西ロボットワールド2024は、AIやシステム技術と融合した次世代ロボットの可能性を広く示しました。これらの技術は、人手不足という社会課題の解決だけでなく、新たな産業の創出や、私たちの生活の質の向上に貢献することが期待されます。

私たち三信精機も、現場の工程改善から未来社会におけるロボットの可能性を広く探っていき、人とロボットの共生を目指していく所存です。

海の豊かさをつなぐ「水中ロボット」

7月に入り、海や川などへレジャーに行く楽しい季節となってきました。日本の海は豊かな海洋環境に恵まれ、多種多様な水産物が獲れることで知られています。これらの水産物は、多くの日本人の食卓を彩り、優れた栄養特性を持っています。

しかし、日本の水産資源は年々減少の一途をたどっており、その持続可能な利用が課題となっています。SDGs目標14「海の豊かさを守ろう」にもあるように、乱獲や環境汚染の影響で日本だけでなく世界的に水産資源の枯渇が深刻化しています。

この課題を解決するために期待されているのが水中ロボットです。水中ロボットとは、人が到達できない海中や海底で、海洋資源の調査やモニタリング、漁業のサポートなど、多岐にわたる役割を果たしています。

養殖場では、水中ロボットが餌やり、成長した魚の特定水域への誘導、密猟者の監視、ごみや死魚の回収など、さまざまな作業を行います。また、近年は省エネルギー浮力制御システムや新しいエネルギー源から電力を供給する技術が開発されています。これらの進展は、効率的な資源管理と持続可能な漁業に大きく貢献しています。

今後も技術革新と共に、その性能と活用範囲は広がり、海と私たちの食卓を守る強力なパートナーとなることでしょう。水中ロボットの進展に注目です。

AI/XR技術が拓く、共生社会の未来

XR(クロスリアリティ)とは、VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの「仮想世界」技術の総称です。ゲーム産業の技術としてよく知られているXRですが、近年は障害者の支援ツール開発に活用されるようになりました。

XR技術を施した「スマートグラス」は、視覚障害のある方に映像処理を行い、障害物などの危険を認識できるようサポートします。
また、聴覚障害のある方には、AIテクノロジーと融合したツールで周囲の情報を字幕で見せるなど、頼もしいガイド役として活躍します。

障害の有無に関わらず互いを尊重し、支え合いながら共生する社会を目指す「ノーマライゼーション」の理念に基づき、障害者の自立と社会参加の促進が求められています。
その課題解決に向け期待されているのが、近年、目まぐるしい進化をし続けているAI、XRといった最先端テクノロジーの力です。

私たち三信精機も様々な技術動向に注目しながら、テクノロジーを活用した先端技術で、未来を創造していく挑戦を続けていく所存です。

「スマート農業」がもたらす日本農業の新時代

「スマート農業」という言葉を聞いたことがありますか?これは、AIやIoTなどの最新技術を駆使して農業を革新する新たな取り組みです。私たちの日常生活でもスマートフォンやスマート家電が身近になりましたが、農業においてもスマート化が進んでいます。

現在、日本の農業は労働力不足という課題に直面しており、農業従事者の数は今後20年間でおよそ4分の1にまで減少すると見込まれています。
農林水産省は、労働力を確保し、食料の供給体制を維持するため、ドローンやAIなどを用いたスマート農業の普及を加速しようとしています。

スマート農業の活用事例としては、ロボットトラクターでの耕起作業の自動化、リンゴやナシの自動収穫ロボット、AI画像解析での生育診断、病害予測できるモニタリングサービスなどがあります。

今後は、スマート農業が日本の農業を強く、持続可能なものへと革新させる鍵となるでしょう。精密機器の開発を担う三信精機も、新しい時代に応える先進的なものづくりで、課題の解決に取り組んでまいります。

災害現場、人命救助を支える「レスキューロボット」

地震によるビルや家屋などの倒壊、豪雨による土砂災害などでは迅速な人命救助が求められる一方で、危険な現場への作業は二次災害の恐れがあります。そこで人が立ち入るには危険な現場での作業や調査を目的として開発されたのが「レスキューロボット」です。

1995年に発生した阪神・淡路大震災をきっかけとして、「一刻も早く人命救助に貢献するシステム」を開発するべく、日本及び世界各国でレスキューロボットの技術開発が進みました。
阪神・淡路大震災後は、人命探索のためのセンサーや遠隔操作のための通信技術の要素が備わり、16年後の東日本大震災では被害を受けた原子力発電所内部の放射線量の探査にもレスキューロボットが活用されています。

地球温暖化に起因した自然災害の増加、更に日本は予測不能な地震が起こりやすい国です。これらの自然災害をなくすことはできませんが、被害を小さく抑制できるよう、また、いち早く復旧できるよう、備えることは可能です。
世界有数のロボット大国である日本でもレスキューロボットの研究は日夜進んでいます。我が社も、ロボット技術の可能性を追求し、持続可能な未来に向けた研究の歩みを進めてまいります。

高齢社会を豊かにする「ロボットテクノロジー」

日本の高齢者人口が増加し、2030年には1人の高齢者を1.8人が支える状況が予測されています。介護職の不足や医療費の増大など、高齢社会に伴う深刻な課題に対処するために、情報通信技術(ICT)とロボット技術の開発および導入が進展しています。

ICTとロボット技術は、在宅医療やリハビリテーションに非常に有用です。たとえば、患者の健康状態をリアルタイムで監視するためのセンサーやカメラを使用した在宅モニタリングシステム、患者の動きを支援し、分析および評価を行い、リハビリテーション計画を最適化するロボットリハビリテーション、認知症患者や社交の機会が限られる高齢者向けのコミュニケーションロボットなどが、介護者の負担軽減に役立っています。

ICTやデジタル技術の進化は、社会課題の解決への道を切り開く創造と革新に繋がっています。我が社も未来につながる新技術で、より活力ある社会づくりに貢献してまいります。

先端技術力の強化に取り組む。

科学技術の先端分野の競争力を高めようと国は「先端科学技術の戦略的な推進」「知の基盤と人材育成の強化」「イノベーション・エコシステム(生態系)の形成」の三本柱の基本戦略を掲げました。

AIの研究開発が進むなか、広く人材の育成を目指し若手研究者の支援やファンドによる支援などを計画しています。先端技術の形成では研究開発力の底上、国際競争に勝つためのグローバル戦略を推進するそうです。

産・官・民の総合的なイノベーション戦略が必要ですが、中小企業の優れた技術力の保全と共有が不可欠です。
蒲田のような特色のある地域産業の維持、継続が基盤だと思います。

先端技術の研究開発は、既存の技術をつなぐ環境づくりと総合的なイノベーション戦略の推進が必要です。我が社でも常に先端技術の研究開発を一体となって取り組んでいます。

AIが欠如する”身体的感性”

「AIで作った俳句は採用しません」と言う記事を読み、どうやって判断するのかと不思議に思いました。確かにAIで俳句は上手に作ることは出来るのでしょうが、それは作品の上手、下手ではなく作ったヒトの身体的な感性や選者の感性が選ぶことなのです。

“柿くへば鐘が鳴るなり法隆寺”有名な正岡子規の句ですがAIで作れば簡単な句かもしれませんが子規は病弱で夏目漱石の下宿に50日程滞在し奈良に入る前日に詠んだ句です。見えない風景を体身から発する感性です。

身体を持たないAIには詠めない俳句です。梅干を見て酢っぱくなるのが身体の感性です。

科学技術はITやAIの技術とヒトの身体的感性の二人三脚で創られる技でなくてはならないと思っています。便利さを追及するのではなく、ヒトがいかに寄り添って技を研くかがこれからの研究開発の大切な視点だと考えています。